秋の園遊会:「陛下に手紙」波紋 「政治利用」山本太郎氏に批判 参院議運、処分検討 根拠は不明確

毎日新聞 2013年11月02日 東京朝刊

 山本太郎参院議員(無所属)が秋の園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した問題は1日、岩城光英参院議院運営委員長が山本氏を国会内に呼び事情を聴くなど波紋を広げた。与野党から「皇室の政治利用に抵触する可能性がある」との批判が相次ぎ、自ら議員辞職しない場合は議員辞職勧告決議案の提出を検討すべきだとの意見も出た。参院議運委は何らかの処分を検討しているが、前例のない行為だけに法的根拠をどこに求めるかなど対応に苦慮。5日に改めて理事会を開き協議する。(5面に「動2013」)

 参院議運委理事会では、山本氏の行為に対し、自民党が「極めて非常識な行為だ。天皇の政治利用との批判を受ける可能性もある。何らかの対応を検討する必要がある」と主張。これに対し、同調する意見があった一方で「憲法に定めた『懲罰』には当たらない」といった慎重意見も出た。

 憲法は天皇について「国政に関する権能を有しない」と明示しているが、何を「政治利用」と見なすか明確な基準があるわけではない。

 過去には、自民党政権下の1973年に防衛庁長官が、面会の際に昭和天皇が「国の守りは大事。しっかりとやってほしい」と発言したと語って政治問題化し、辞任に追い込まれたことがある。ただ、山本氏のケースは質的に異なる。

 園遊会は天皇、皇后両陛下が主催して各界の功労者をねぎらい励ます場で、招待客が手紙を渡すのは宮内庁にとって、そもそも想定外の出来事。同庁幹部は「陛下の意見を求めたりしているわけではないので『政治利用』とまでは言えないかもしれないが、皇室の行事を利用して自らの主張を広めようとする非常識な行為だ」と話す。

 一方、憲法は「衆参両院は、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる」と規定している。秩序をみだすとは一般的に「正当な理由なく本会議や委員会に欠席」「議院の体面を汚した」などを指す。自民党幹部は山本氏のケースについて「懲罰は法律上の問題もあり、精査が必要だ」と語る。

 横田耕一九州大名誉教授(憲法学)は、今回の山本氏の行動について「天皇の権威を利用しようという意図があると言われても仕方がない」と指摘。山本氏が福島第1原発事故の被害状況を天皇陛下に知ってほしかったなどと説明していることについて「国会こそが『国権の最高機関』であり、本来は国会議員である自分たちが、国会の中で議論すべきことだ」と語った。【影山哲也、長谷川豊、小泉大士】

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